研究概要 |
実験1.歯肉溝滲出液(GCF)中のケモカインの解析手法の確立 口腔衛生状態の良い成人を対象に犬歯の隣接面に歯冠分離用モジュールを挿入し,挿入前と1,3,5,7日後に歯肉溝からGCFを採取した.回収したGCFの総量は定量可能レベルであった.また,GCF中の構成成分のうち,定量予定だったケモカイン(IL-8,RANTES, MCP-1)について,IL-8については定量可能であることが検証できた.MCP-1,RANTESは定量不可能であった. 実験2.矯正力の大きさとGCF中のケモカインの動態の解析 口腔衛生状態の良い成人を対象に,20gと100gの異なる大きさの矯正力を加えて,GCF中のケモカインの動態,歯の移動速度と矯正力の大きさの関連の解析を行った.結果,すべての対象で矯正力負荷後にIL-8は一過性に上昇したが,その上昇の大きさ,時期については個体間のばらつきが大きく,統計的に関連付けることができなかった. 追加実験 機械的刺激負荷による培養歯根膜細胞のケモカイン産生 実験1において,矯正力負荷後IL-8のみが一過性に上昇した.これが歯に矯正力を加えた結果によるものかを検証するため,培養歯根膜細胞にshear stressとpressureの2種類の機械的刺激を加え,ケモカインの産生を検証した.結果,shear stressもしくはpressureを培養歯根膜細胞に加えるとIL-8のみ上昇した.Shear stressもしくはpressureを培養歯根膜細胞に加えるとIL-1βはほとんど変化しなかったが,IL-1βを抑制するとIL-8産生は抑制された.さらに機械的刺激による培養歯根膜細胞のIL-8産生にはMAP kinaseの活性化が必須であることが示された.
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