研究概要 |
歯の脱灰抑制,再石灰化促進には口腔内環境である唾液,歯垢中に微量のフッ素が常に存在することが重要である。これまでの研究により水道水フッ素化された地域の住民の唾液中フッ素濃度は0.02〜0.05ppmであることが報告されており,このレベルのフッ素濃度は再石灰化促進よりも,脱灰抑制により効果的であることが報告されている。しかしながらこれらの研究は永久歯を対象としており,乳歯と比較したものはない。そこで,唾液レベルのフッ素が乳歯および永久歯の脱灰抑制,再石灰化促進に及ぼす影響を明らかにすることを目的に本研究を行った。研究材料にはヒト乳歯,永久歯を用い,研究方法はC.Robinsonらの方法に準じて行った。 実験の結果,総ミネラル喪失率においては永久歯,乳歯ともにフッ素含有群では非含有群に比して低く,有意に脱灰が抑制されていたのに対し,総ミネラル獲得率ではフッ素非含有群,含有群間に有意差は認められなかった。また,フッ素含有群におけるミネラル喪失率は乳歯,永久歯間に有意差は認められなかった。今回の研究により,0.05ppmという極低濃度であってもフッ素を含有することにより,有意に脱灰を抑制することが理解された。また,この脱灰抑制効果は永久歯,乳歯に同等に認められた。しかしながら,再石灰化の促進に関してはフッ素非含有群との間に有意差を認めず,0.05ppmのフッ素濃度は脱灰抑制に対し,より効果的であることが理解された。
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