研究概要 |
勤労者を対象に飲酒習慣および飲酒量を調査し,対象者のアルコール脱水素酵素(ADH)およびアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の遺伝子型を判定し,これらの要因と歯周病の状態の関連性を検証することにより,飲酒習慣およびそれに関連する遺伝素因が歯周病進行のリスク因子となることを明らかにすることを目的とした。 大阪府下某企業で行われた社内健康診断受診者のうち,平成16年度の医科および歯科健康診断および平成17年度の歯科健康診断の両方を受診し,ADHおよびALDHの遺伝子型が明らかである191名を対象として解析を行ったところアルコール摂取量と歯周病の進行には有意の差を認めなかった。暴露期間の延長を考慮し,平成13年度と平成17年度の健康診断受診者178名(男性159名,女性19名)を対象として再度解析を行った。解析には平成13年度のライフスタイルに関する自記式質問票の結果と口腔診査の結果,平成17年度の口腔診査の結果を用いた。ライフスタイル要因として,森本の健康習慣8項目と生涯喫煙量の指標であるPack-Yearsおよび一日あたりのアルコール摂取量を用い,歯周病の進行は平成13年度と平成17年度における各歯の歯周ポケット深さの差より求め,2mm以上進行した部位が2ヶ所以上見られる者を歯周病進行者とした。歯周病進行と健康習慣との間には,生涯喫煙量および一日あたりのアルコール摂取量において,2変量間に有意の関連性を認めた。その他,運動習慣および栄養バランスを考えた食習慣において,悪い習慣で歯周病が進行する傾向を認めたが,有意ではなかった。歯周病進行とアルコール摂取量との関連性は,その他の生活習慣を用いて調整しても有意であった。飲酒量とALDH遺伝子型が歯周病進行に及ぼす影響を調べたところ,ALDHに対する遺伝子型が1/1型(活性型),の集団内では飲酒量と歯周病進行との間に関連性を認めたが,遺伝子型が1/2型(不活性型)の集団内では飲酒量と歯周病進行との間に関連性を認めなかった。
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