研究概要 |
療養環境は,患者にとっては,治療と生活の質を左右する重要なサービスである。そこで本研究では,医療サービスの消費者である患者の満足度を高め,各施設の目的にあった医療を効率よく提供するために,療養環境のアセスメントの指標となる環境評価項目を抽出した。また,環境整備に影響を与えると考えられる,患者と看護師との環境評価の相違点を明らかにした。 患者を対象とした調査では以下の項目が明らかになった。1.テリトリーに関連する項目(自分のスペース,隣ベッドとの仕切りなど),2.設備・機能に関する項目(室内の設備,室外設備への距離,面会者のための設備など),3.サービスに関する項目(掃除など),4.自分の状況に関する項目(慣れた場所など),5.印象に関する項目(新しい,きれいなど),6.視環境に関する項目(眺めがよい,他者から見えないなど),7.音環境に関する項目(自分に聞こえない,他者に聞こえないなど),8.スタッフの対応・体制に関する項目である。これらの項目は,患者の活動内容の拡大や,活動しやすさ,苦痛・疲労の軽減,心理面へ影響を与えていることも分かった。 患者と看護師の評価を比較すると,評価する物理的対象は共通していても,期待する内容(影響)は異なっており,例として,広さを評価する場合には患者は気分への影響を回答したが,看護師ではケアへの影響を回答していた。また,看護帥は,様々な状態の患者の中でも,より日常生活動作レベルが低い患者を想定して,環境を安全に使えるかどうかという視点で評価していた。以上より,患者と医療者では環境評価の基準が異なっている可能性があることを念頭に,各施設の患者層に適した環境の整備を進める必要があるといえる。
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