【目的】発症前診断を受けた家族性腫瘍患者の看護支援方法を探索するために、(1)家族性大腸腺腫症患者の大腸全摘後の排泄障害に対する対処方法、(2)遺伝相談外来における発症前診断前後の看護師の役割、(3)米国の遺伝看護の状況を明確化する 【方法】(1)家族性大腸腺腫症患者5名に対しインタビューを行い、排泄障害に対する対処方法について質的分析を行った(2)遺伝相談外来にて家族性腫瘍患者の発症前診断前後の看護に携わる国内外の看護師3名に対して、インタビュー調査を行い、看護師の役割を明確化した(3)米国の遺伝看護教育および遺伝カウンセリングの実態調査を行った 【結果】(1)患者自身の対処方法は、[症状をアセスメントする][体の状態に合わせた行動をとる][親の体験を参考にする][症状にまつわる感情の調節をする][予防的方略を模索する][社会復帰への手がかりを見つける]、以上6つであった。(2)看護師の認識していた役割は、[臨床経験のバックグラウンドを生かした関わりをする][他事例の体験を紹介する][精神的なサポートを行う][治療や検査、症状コントロールにも関わる][各診療間の繋ぎをする]、以上の5つであった。(3)アイオワ州では1976年よりRegional Genetic Consultation Serviceが提供されていた。この中では、利用者の増加に伴い家族性腫瘍の発症前診断については、電話にて行っているケースもみられた。また、米国の遺伝看護教育は、学部教育の段階から系統的に行われていた。 【考察】日本の遺伝看護の状況は、予防的措置にまつわる問題の対処法を模索する患者と、数少ない遺伝看護を担う看護師の役割が対応していない現状が明らかとなった。したがって、このような臨床状況を踏まえ、遺伝看護教育の充実および遺伝相談システムの確立をしていくことが急務といえる。
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