研究概要 |
本研究は在宅療養において医療依存度の高い患者を対象に,病状やADL,治療や看護,療養環境,社会資源,社会保障などが家族介護者に与える影響を包括的に評価するための介護負担感尺度を開発することが目的である.今年度は昨年行った山形県内の訪問看護ステーションの事業所管理者と訪問看護師,訪問看護利用者を対象とした在宅療養の実態調査をもとに分析を行った. 山形県の訪問看護利用者の調査結果の分析から,利用者は後期高齢者で全面介助を要する寝たきりが多く,日常生活的援助が多く求められ,利用サービスについては医師の受診で訪問診療,主治医は医院かクリニックに月1回の受診,訪問看護以外のサービスでは訪問介護が最も多く利用されていた.訪問看護は週1回,30分〜1時間の利用で,最も多く行われるのは病状観察であった.医師や福祉・保健との連携に関してはほとんど良好な評価で,利用者の療養上の最も多い問題・課題は「患者・家族との関係性」であった.以上述べたのは訪問看護の対象となる平均的な利用者像であるが,利用者の特性や障害・疾病において医療依存度の高い対象者は少なくなく,支援体制内容や訪問看護の状況,療養上の問題はいずれも多種多様で幅広いために,訪問看護だけでは解決しがたい多問題を抱える利用者もいた.また,利用者満足度について実態を把握し,これらの利用者満足度と利用者の特性との関連を検討したところ,全体として利用者満足度はいずれも非常に高いが,利用者満足度を低くすることに関連する要因としては,訪問看護の担当体制,ケアプランの適切さ,多問題を抱える利用者が考えられた. 利用者が求める多種多様なニーズに対応する在宅支援体制,訪問看護サービスが必要なことが示唆されたが,特に医療依存度の高い在宅療養者に焦点を当てた利用者と家族の負担感のアセスメントの必要性は高い.介護負担の構成要素を抽出した尺度の検討を引き続き行う.
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