研究概要 |
本研究の目的は,在宅で生活する厚生省障害老人の日常生活自立度(以下,自立度)Jランクの高齢者における活動意欲の構造を明らかにし,その影響要因を抽出することである。 研究デザインは,帰納法的,質的因子探索型研究とし,具体的方法としてグラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。対象はI県内に居住する自立度Jランクの高齢者である。対象の選定条件は,自立度Jランク,有配偶者,痴呆なし,年齢は75〜80歳,自ら社会的活動を行っている,配偶者は自立度Jランク以上等とした。さらに,地域性,性別,家族構成による差異を考慮し,地域を限定すること,男女ほぼ同数にすること,家族構成に偏りがないように配慮した。対象の抽出にあたっては,市町村の保健師に研究の趣旨等を説明し,条件に該当する高齢者の選定を依頼したこと,保健師から事前に研究の趣旨等の説明と研究協力への意向を確認してもらい,内諾が得られた後に研究者から対象者に直接連絡をとり,訪問を行った。面接内容は,日常生活の中で楽しいと感じるのは何をしているときか,生きがいにつながっている活動にはどのようなものがあるか,現在の生活をどのようなものと感じているか,今までの人生を振り返ってご自分の人生をどのように感じているか等である。 今年度は国内外の文献検討の実施とインタビューガイドの作成を行い,対象に対し,半構成的面接と参加観察を実施した。現在,面接・分析の途中段階であるが,活動意欲の構造や関連要因として,人生を切り開いてきた自信,健康でいられることの有難さ,今の健康レベルが1日でも長く続くための心構え,今を精一杯生きる,幸せな死を迎えるための準備,老いとの語り,自然とのコミュニケーション,地域や社会への感謝と生きた証を残すこと等が推察された。今後,順次,面接と分析を進めるとともに,対象を増やしていく予定である。
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