研究実績の概要 |
多重ゼータ値とはここ四半世紀で研究が盛んになった研究対象であり、多重Eisenstein級数とはGangl, Kaneko Zagier (2006)により導入された二重Eisenstein級数を一般化した級数のことである。Bachamann氏は外国人特別研究員として採用されていた1年間、国内のさまざまなセミナー、研究集会に足繁く出向き国内の若手の研究者たちと複数の共同研究を同時進行で行い、この多重ゼータ値と多重Eisenstein級数について精力的に研究を続けてきた。主だった業績として以下の4つが挙げられる: 1).多重Eisenstein級数の微分に関する研究:多重Eisenstein級数は、depthが1,2,3の場合において多重Eisenstein級数に関連するある種のq級数が微分作用素で閉じていることを計算により示した。 2).補間Schur多重ゼータ値の研究:多重ゼータ値や多重ゼータスター値を一般化した補間多重ゼータ値という多項式とYoung図形より構成されるSchur多重ゼータ値が知られている。これら二者をつなげる補間Schur多重ゼータ値という多項式を導入し基本的な性質を導いた。 3).円分的有限多重ゼータ値の研究:円分的有限多重ゼータ値を導入して、これの基本的な代数的構造の基本的性質、特殊値、有限多重ゼータ値のq類似とのつながりについての結果を得た。 4).Schur多重ゼータ値の和公式の類似の研究:多重ゼータ値や多重ゼータスター値と同様にSchur多重ゼータ値に対しても和公式の類似が成り立つことを示した。
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