研究実績の概要 |
年齢と高齢者の暑熱順化が汗イオン濃度調節機構に及ぼす影響を検討するため,昨年度から継続的に以下の研究を実施した. 1.年齢が汗イオン濃度調節機構に及ぼす影響 50~85歳の年齢範囲の男女36名を被験者とした.環境温25℃,相対湿度50%の環境下で安静温熱負荷(43℃の下肢温浴と水循環スーツ)を45~60分間実施した.また,各被験者の身体特性(最大酸素摂取量含む)と局所発汗テストを別の日に実施した.一つの結果として年齢と汗イオンの最大再吸収能の間には関係か認められなかった.分析をさらに進め年齢が汗イオン濃度調節機構に及ぼす影響を明らかにしたい. 2.高齢者の暑熱順化が汗イオン濃度調節機構に及ぼす影響 高齢者の被験者10名(男性8, 女性2, 年齢; 67 ± 1.5 yrs, 身長; 60.8 ± 9.0 kg, 体重; 165.9 ± 7.3 cm, 推定最大酸素摂取量; 32.6 ± 4.5 ml/kg/min)に9日間の暑熱順化実験を実施し,その前後と暑熱順化後1週間の計3回,下肢温浴により汗イオン濃度調節機構やその他の発汗機能(これまでの方法と同じ)を測定した.暑熱順化は環境温35℃,相対湿度45%の環境下で自転車運動により体温を約1℃上昇させ,その後,運動と安静を組み合わせてこの体温を約1時間維持する方法を用いた.暑熱順化により安静時体温低下,血漿量増加,温度感覚低下の変化がみられた.汗イオン再吸収能は胸で有意に増加した. 温熱負荷中の総発汗量が増加し,汗NaCl濃度は有意に低下した.また,発汗開始閾値は大きく変化せず,個人差が大きかった.このことから,9日間の暑熱順化では汗イオンの最大再吸収能は身体の部位によってその改善程度が異なるが.高齢者においてもこの能力の改善が認められた.さらに分析を進め高齢者に対する暑熱順化効果を検討したい.
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