研究実績の概要 |
以下の項目(1)-(4)のステップを完遂し,スター・トライアングル関係式の新しい解を構成し,応用として,関連する q-超幾何関数の積分変換を明らかにすること,超対称ゲージ理論の指数を用いた双対性による説明を与えること,更に温度に該当するパラメーターを0に近づける極限で,基底状態のスピン配置と古典可積分系における非線形発展方程式との関係を明らかにする等といったテーマに取り組み,受入研究者,特別研究員の Kels 氏および山崎雅人氏と三人で考察して研究を進めた.Kels 氏は解析的に計算を推進し,議論の要となる段階では,計算機も駆使することで途中段階の結果を確認し,新しい予想を提出するなど,研究の推進に大きく寄与した. (1)量子群U_qsl(1,1)のR行列のパラメーター q を1のN乗根に特殊化したものを構造関数に持つ2次の代数の生成元(L演算子と呼ばれる)を求めること.(2)L演算子の各成分を補助ベクトルpsi-bar, psi を用いて因子化すること.(3)L演算子は2次元空間とN次元空間の直積に作用するが,後者の積を入れ換える同値変換を与える行列 S を求めること.(4)psi-bar, psiベクトルを利用して,(3)のSを因子化し,スピン模型のエッジ相互作用のボルツマン重率を抽出すること. これらのうち(1), (2), (3) のステップを概ね達成できた.とくに量子U_qsl(1,1) の超対称性から L演算子や\psi-bar, \psiベクトルには反可換なグラスマン数が介入してくる.これは先行研究には見られない新規な様相である.今回の共同研究では,抽象的な代数的アプローチでなく,受入研究者が構成した R 行列から出発し,具体的な物理模型の構成という動機,背景に基づいて,そのような実例を得ることが出来たという意味で,数理物理学としての意義が深い.
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