研究実績の概要 |
当研究室では、胚仔の子宮内膜接着以前に作出された細胞株CT-1細胞と胎盤形成後のトロホブラスト細胞から樹立されたF3細胞を有する。ところが、CT-1細胞はどのように処理しても細胞融合が起こすことができなかったので、F3細胞をメインにして解析が進行した。これまで、ウシ・トロホブラスト細胞融合に関わる内在性レトロウイルス遺伝子としてBERV-K1(当研究室にて発見・同定)とSyncytin-Rum1が存在するが、もう一つの候補としてウシ亜科特有のBERV-K3を同定した(Sakurai et al., 2017)。本研究が進行中に、胚トロホブラスト細胞が融合能を獲得するためには、癌の浸潤で見られる「上皮間葉系転換(Epithelial-mesenchymal transition、EMT)が必須であることを見出した。そこで、本研究者はトロホブラスト細胞のEMT過程とそのメカニズムを先ず解明し、次に細胞融合を研究しようとした。その過程で接着因子Selectinの関与を明らかにし(Bai et al., 2015)、EMT発生のタイミングに必須なFollistatinやactivinAの関わりを明らかにした(Kusama et al., 2016)。さらに、EMT発生に必須な転写因子OVOL2を発見し、そのデータはFASEB Jに掲載された(Bai et al., 2018)。また、特別研究員期間中、総説の執筆にも関わった(Imakawa et al., 2016)。
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