研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、外国人特別研究員であるCedric Rentier氏が担当したものである。氏は、骨格筋増強薬の開発をめざし、筋肉の増殖を負に調節する因子であるマイオスタチン阻害剤の創製研究を昨年度に引き続き継続した。すなわち、昨年度は、マウスマイオスタチンプロドメイン配列の区分ペプチドから導かれた23残基からなるマイオスタチン阻害ペプチドを足掛かりに構造活性相関研究を展開し、N末端に2-ナフチルオキシアセチル基を有する約11倍阻害活性を増強させた直鎖ペプチド誘導体を創製したが、今期はそのin vivo 評価としてマウス前脛骨筋重量への効果を検討した。その結果、当該ペプチドが陰性コントロール群に比して筋肉重量を10~19%増加させることを明らかとした。一方、ペプチドの構造を剛直化することで活性を増強させる最も直接的な方法としてペプチドの環状化があることから、上記高活性ペプチドの環状化研究を昨年に引き続き拡大的に実施した。環化の位置および異なる環化法を検討した結果、環状化された全てのペプチドが直鎖ペプチドよりも良好な阻害活性を示した。中でもジスルフィド結合による環化が阻害活性の向上に良好であった。本研究成果は、今後の臨床に有益なマイオスタチン阻害ペプチドの創製に重要な知見を提供でき、筋ジストロフィー等の筋萎縮性疾患の治療薬開発に道を開くものである。尚、Rentier氏は、日本国内にあるバイオ関連企業への就職のため、本年度11月末で本外国人特別研究員の採用期間を早期に終了した。
2: おおむね順調に進展している
Rentier氏が実施したマイオスタチン阻害ペプチドの開発研究では、一連の構造活性相関研究により、起点となった初期のペプチドよりも11倍強い活性を有し、かつマウスの筋肉量を約20%増加させる新しいマイオスタチン阻害剤ペプチドの創製を達成した。加えて、阻害ペプチドの環状化により、その阻害活性のさらに強化なものに導いている。これらの成果を勘案すれば当初の計画通りにおおむね研究が進捗したと言える。
本研究は、Rentier氏の国内にあるバイオ関連企業への就職により、本年度11月末で外国人特別研究員の採用期間を早期終了したことから、終了となった。しかし、氏が見いだした重要な知見を基に、臨床に有益なマイオスタチン阻害ペプチドの創製研究は今後も続行する予定である。
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ACS Medicinal Chemistry Letters
巻: 8 号: 7 ページ: 751-756
10.1021/acsmedchemlett.7b00168