研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、以下の作業仮説、すなわち、「ラフト親和性受容体では、受容体会合、安定ナノラフト領域形成、アクチン重合の3つの過程が協働的にはたらいて、シグナル変換と受容体の細胞内取込みを起こす」という仮説の成否を検証し、解明を進めることであった。具体的には、『炭疽菌毒素の受容体結合サブユニット(無毒)の細胞内侵入の初期過程』を研究パラダイムとした。毒素の細胞内への取り込みを担うサブユニットProtective Antigen(PA)が、膜貫通型受容体CMG2またはTEM8に結合すると、受容体からの細胞内シグナルが誘起され、毒素が結合した受容体は細胞内に取り込まれる。この過程と分子機構の解明を目指した。特に、PAからPA63が生成し、これが細胞内に取り込まれて感染が起こるので、取り込み機構を重点に検討した。その結果、PA63の会合過程は複雑で、様々な制御機構が働くが、PA63の4量体とそれより大きな会合体には、ガングリオシドのGM1とGM3がコレステロール依存的にリクルートされて来ることが分かった。すなわち、PA63の4量体以上の会合体は、細胞膜上でのラフト形成の核となっていることが分かった。しかし、蛍光標識されたガングリオシドのGM1とGM3がPA会合体と共局在する時間は、それぞれ0.3秒程度と0.1秒程度と過渡的であった。すなわち、ラフトを形成する分子は、常に、外側の細胞膜バルク領域にある分子と交換していることが分かった。この結果は、以下を示唆している。すなわち、ラフト相互作用はGM1とGM3の両者に働くが、それに加えてGM1は、糖鎖の部分でPAかつ/またはPA受容体と直接に分子間相互作用をおこなっている、ということである。一方、この結果は、PA会合体が誘起するラフトは数nmから10nm程度の直径であり、ラフト脂質が高速で出入りする動的ラフトであることを示唆している。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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J Cell Biol
巻: 未定 号: 4 ページ: 1183-1204
10.1083/jcb.201607086
120005998045
Nat. Chem. Biol.
巻: in press 号: 6 ページ: 402-410
10.1038/nchembio.2059