研究実績の概要 |
本研究では、生徒にオリジナル英語ポスターを作成させる「視覚教材を利用したタスク」が、文法知識の自動化にどの程度効果的なのかをスピーキングテストの結果を通して検証した。 調査手法としては、兵庫県立高校の生徒56名を実験参加者とし、英語習熟度がほぼ均一な2クラスを実験群と統制群に分類した上で、それぞれに以下のような「無生物主語構文」をテーマにした授業を行った : 実験群 : 無生物主語構文の用法の説明と、10個の基本例文を覚えさせた後、それらの構文を使ってオリジナル広告ポスターを全員の生徒に作成させた。 統制群 : 無生物主語構文の用法を説明し、基本例文を覚えさせた上で関連する文法演習問題を解かせた。 授業の3日後、および1ヶ月後に「ALTとの1対1のスピーキングテスト」を行い、そのテスト(イラストの内容を述べるタスク)中での無生物主語構文の使用頻度と発話の流暢さを検証した。 実験の結果、オリジナル広告ポスターを作成させたクラスの方が、文法演習問題を用いて学習したクラスよりも「無生物主語」を使った英文を高頻度で発話していた(「対応のないt検定」で測定した結果、3日後のスピーキングテストにおいてはp<.01, 1ヶ月後のスピーキングテストにおいてはp<.05の有意な差が表れた)。ただし、発話の流暢さをWPM(発話時間に占める発話語数)で測定した結果に関しては、2つのクラスの間に有意な差は見られなかった。 以上の結果から、日本人高校生に視覚教材を用いて文法指導を行うことは知識の自動化を促進し、スピーキングテストにおいて学習した内容を用いて発話しようとする態度を育てることが明らかになった。 なお上記の研究結果の一部は「英語授業研究学会 関西支部研究学会」、及び「兵庫県高校英語研究会」において発表された。また、研究の内容を2017年度中に論文としてまとめ、英語授業研究学会の研究紀要に投稿する予定である。
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