【研究の目的】 本研究は、Banduraによって提唱された「自己効力感」の視点から、女子大学と共学大学におけるキャリア教育の相違を明らかにするとともに、女子学生にとってより良いキャリア教育の在り方を提案することを目的とした試行的調査研究として実施した。 【研究方法】 1. キャリア教育内容を明らかにするため、女子大学(46校)・共学大学(17校)にアンケート調査を実施。 2. キャリア教育の成果と課題について女子大学・共学大学から各2校を抽出し、聴き取り調査を実施。 3. 大学での学びと「自己効力感」の関係についてWEB調査(女子大卒104名・共学大卒194名)を実施。 【研究成果】 アンケート調査の回答数は女子大学14校、共学大学6校であった。教育内容に関する回答が空欄という学校が多く、本調査では、キャリア教育の実態を明らかにすることはできなかった。 そこで、キャリア教育を正課授業として位置づけている大学4校の聴き取り調査を実施。調査対象者は、キャリア教育担当教員もしくはキャリアセンター職員。偶然にも、うち3校は2010年度文部科学省就業力育成支援事業(就業力GP)採択プログラムを発展させた形で運営しており、大学設置基準の趣旨を十分に理解した取り組みがなされていた。さらに、4校ともにアクティブラーニングを意識し、実践を通じて学生自らが考え行動できるようになることを教育目標としていた。また、今回調査した女子大学では、女性特有のライフイベントを踏まえた進路選択について触れていたが、共学大学では特に触れていなかった。 WEB調査では、大学卒業後及び現在の正規雇用就業者数を比較すると共学大学出身者の割合が高かった。自営業および経営者を含むと女子大学出身者の割合の方が高くなった。また、大学卒業後就職した職場に現在も勤務し、職位が部長・取締役クラスになっている割合は共学大学出身者が高かったが、転職を経験しながらも正規雇用で就労を継続している割合は女子大学出身者の方が高いことなどがわかった。今後、年代・地域・設置区分(国立・私立)等を変数とした詳細な分析を行い、課題を整理していく。
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