本研究の目的は、小学校体育授業における思考・判断に関する学力を、効果的に保障する体育授業の在り方を実践的に明らかにすること、である。具体的には、仲間との関わりに効果のある学習指導モデルを適用する中で、思考・判断を促すツールとしてICTの活用方法を検討する。近年の体育科教育学では、授業の目的に合わせてより効果的に学習成果を保障する学習指導モデルが提唱されている(Metzler、2002)。特に、協同学習モデル(Dyson、2001)は、役割分担が設定され、仲間との関わり合いに効果があると考えられる。この学習指導モデルは、仲間と関わり合う中で思考・判断を促しながら学習を進めることができる可能性を示唆している。以上から、本研究では、協同学習モデルと携帯可能で映像の撮影・視聴が容易なタブレットPCの活用を組み合わせることで、思考・判断に関する発話の保障をより効果的に可能とする授業の在り方を究明できると考えた。 対象は、小学校の第6学年1学級(男子17名、女子18名、合計35名)とし、跳び箱運動(首はね跳び)の単元(全6時間)であった。協同学習モデルを適用し、首はね跳びの動きを3つの局面に分け、グループ内で役割を分担した。タブレットPCの使用に関する条件は、①3-4名のグループに1台を使用した、②首はね跳びの試技の映像を撮影した、③振り返りの際にその映像を使用した。 収集したデータは、ワイヤレスマイクを用いて抽出児童のグループの行動や会話をビデオに記録した(1)学習者行動、(2)思考・判断に関わる会話、であった。 その結果、以下の3点が明らかになった。第一に、タブレットPCの映像を見ることで動きの課題について共通の認識を持つことができた。第二に、タブレットPCの映像を見直し、担当した局面の動きについて判断したことを伝えていた。第三に、単元の後半では、役割とは関係なく、首はね跳びの改善に関して各自が思考したことを発言していた。
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