筆者は岡本(2000)が製作したスライドフィルムケースを用いた断層モデル実験装置に代わる、組立て式のモデル実験装置(逆断層形成用)を製作した。しかし、この実験装置は、逆断層を常に再現(形成)することはできるが、正断層を再現(形成)することが難しいという課題があった。 本研究の目的はこの課題を克服し、正断層を高い頻度で再現(形成)できる実験装置を開発すること、また、実験装置内に使用するモデル地層の材料(白色の層)についての検討、開発した実験装置の有効性について教育実践に基づいて検証を行うことである。 筆者は正断層を再現(形成)できるように実験装置の製作(改良)を行った。装置は逆断層用実験装置を基にし、その装置内にV字型の空間を形成するように2枚の基盤岩モデルとなる板を設置する。その空間内に白色と茶色の層が挟在したモデル地層を形成して実験を行い、正断層が再現(形成)されることが確認された。 またモデル地層(白色の層)の材料の検討も行った。従来は小麦粉(白色の層)とココアパウダー(茶色の層)を用いるが、児童生徒に小麦粉アレルギーを持つものがいることも考えられる。その対策として白色の層に用いる材料を変更する。用いる材料は硅砂、ファインサンド、図画工作用の焼石膏で、装置内にモデル地層を形成して、再現実験を行いながらどの組み合わせが最適か検討した。その結果、ファインサンド、図画工作用の焼石膏を用いた時、小麦粉を用いた時と同様に正断層を形成することが確認できた。 児童生徒を対象とした出前実験授業等の場で装置を使用し、児童生徒の反応の様子から教材としての有効性について検討を行った。その結果、実験の様子のビデオ分析等から教材として有効であることがわかったが、課題として小・中学生を対象として実験授業を行った際に、装置内にモデル断層を形成するのに時間がかかったり、綺麗に形成することが難しい等の課題が明らかになった。今後、実験手順、さらなる装置の改良を行っていく。
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