研究の目的 : 炭素繊維強化複合材料CFRPの引張試験片は両端をアルミやGFRPのタブで補強するようJISに規定されている。JISタブを使用した似等方性積層板の試験片は評定部で破壊が生じるが、1方向積層板を縦方向に引張る場合は、タブに生じる応力集中の影響によりその殆どが最大荷重に至る前にタブ近傍から破壊してしまうので、みかけの応力値が低く計測されるという欠点がある。CFRPの1方向積層板の縦方向引張試験片に理想的な破壊を生じさせるのは難しいとされているが、つかみ部の応力集中の影響を抑制できる連続型タブを新しく考案した。この連続型タブの最適化を行い応力緩和に最も寄与するタブの形状、寸法、剛性を明らかにするのが本研究の目的である。 研究の方法 : 試験片はCFRPの1方向積層板クーポンの表裏にアルミ合金製連続型タブを重ね、評定部は残してつかみ部を接着した。比較用にJIS標準タブ接着の試験片も作成した。そして夫々の引張試験を行い得られた破壊応力とひずみのデーターから連続型タブの応力集中抑制効果を評価した。さらに金属タブの形状、寸法、剛性が与える影響について検討を重ねた。CFRPの1方向積層板の縦方向引張試験片は一瞬にしてバラバラに壊れてしまうので、ビデオカメラの連続写真をパソコンに取り込み破壊解析に使用した。 研究の成果 : 最適化されたアルミ合金製連続型タブを使用した場合、試験片のCFRP破壊ひずみがJIS標準タブ使用に比べ7-10%ほど大きくなるのが分かった。そのCFRPひずみを、JIS標準タブ使用の荷重とひずみの曲線に外挿してみるとCFRPの破壊応力の推定値もやはり7-10%ほど大きくなっているのが分かった。たった7-10%程度の値であるがそれでも応力集中がかなり緩和されているのは明らかである。CFRPの1方向積層板の縦方向引張で、理想的な破壊を生じさせるのは難しいとされていたが、本研究によりアルミ合金製連続型タブに応力集中の影響を抑制する効果があるのを実証することができた。
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