本研究では、マダイの人工種苗生産において生じる体色透明化異常について、原因遺伝子の特定に向けた染色体領域の詳細化を行った。 まず、前年度の科学研究費補助金奨励研究により得られた透明個体特異的一塩基多型(TP-SNP)の情報を用い、新規に開発したマダイ連鎖地図へのマッピングを試みた。両親の多形からTP-SNPそのものを連鎖地図上に配すことができなかったため、TP-SNPを含む遺伝子断片をマダイのゲノムアセンブル配列との相同性検索を実施し、TP-SNPを含むスキャフォールドを得た。さらに、メダカゲノムDNAデータベースからTP-SNPを含むスキャフォールドの相同性配列を探索したところ、TP-SNPはNel12a遺伝子のイントロン13に位置することが明らかとなった。そこでNel12a様遺伝子をマダイゲノムデータベースから探索し、同遺伝子配列中に存在するマイクロサテライトDNAを用いて連鎖地図へのマッピングを行なった。その結果、連鎖群4にNel12a遺伝子がマッピングされた。 連鎖群4に配置されているマイクロサテライトDNAマーカーを用いて関連解析を行ったところ、Pma4_155とPma4_330において透明個体で単一のアリルがホモ接合を示した。しかしながら、正常個体においても同一の遺伝子型がホモ接合を示す場合もあり、正常個体と透明個体を完全に識別するマーカーを見出すには至らなかった。 現在、透明個体特異的SNPを用いた実験家系の構築を行い、次世代シーケンサーを用いたRAD-seq解析による連鎖解析を行っており、マイクロサテイライトDNA情報と合わせたより詳細な連鎖地図の作成に取り組んでいる。マーカー密度を増やしたことで、有効な候補遺伝子領域を絞り込むことが可能になっており、現在、2つの原因候補遺伝子が得られている。
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