近年、多くの研究により薬物代謝酵素の活性の変化が薬物の効果や副作用の個人差に大きく影響することが明らかになってきた。そのため、酵素活性を予測するための方法が考案され、現在は酵素の遺伝子多型の組み合わせから表現型を予測する方法や、酵素の基質となる少量の薬物を投与して代謝物を測定する方法が行われている。しかし、これらの方法は酵素活性に与える影響が不明な遺伝子多型が存在することや薬効を求めない薬物を投与する点での倫理的な問題がある。そのため、薬物代謝酵素の活性を予測する方法として、生体内内因性物質に対する酵素活性を評価する方法が報告されている。本研究では、内因性物質及びその代謝物の血中濃度の比と基質薬物に対するCYP2C19の活性を比較することで、基質薬物に対するCYP2C19活性の予測に内因性物質代謝活性が利用できるかを評価することを目的とした。 本研究ではCYP2C19の活性評価としてオメプラゾールを用いるため、液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計を用いたオメプラゾールおよびCYP3A4による代謝物であるオメプラゾールスルフォン、CYP2C19による代謝物である5'-ヒドロキシオメプラゾールの同時測定系を構築した。また、各種遺伝子多型の影響を考慮するため、CYP2C19遺伝子多型として制限酵素断片長多型分析法を用いたCYP2C19*1、2、3、17の分析法を構築した。現在、これらの技術を用いた臨床研究の準備を進めており、健常者におけるオメプラゾールのCYP2C19による代謝率とN-アセチルセロトニン/メラトニン比を比較することで内因性物質を用いた代謝活性の有用性について評価する予定である。
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