研究実績の概要 |
進行性腎細胞癌に対する分子標的治療薬アキシチニブは、血中濃度―時間曲線下面積(AUC)と治療効果が相関する可能性が示唆されている。また小腸上皮細胞などに発現する薬物排出トランスポーターであるBCRP(ABCG2遺伝子)およびP糖蛋白(ABCB1遺伝子)には多型が存在し、薬物の体内動態に影響することが明らかとなっている。今回、進行性腎細胞癌患者に対してアキシチニブの血中濃度とトランスポーターの遺伝子多型、およびアキシチニブ治療に伴う有害事象の関連解析を行い、それらの測定が有害事象の予測指標となるかどうかについて検討を行った。 アキシチニブ治療の導入目的で入院し、本研究に同意が得られた進行性腎細胞癌患者20名を対象とした。アキシチニブ内服開始初日および定常状態において内服直前および0.5、1、2、4、6時間後に採血し、血漿中のアキシチニブ濃度をUPLC-MS/MS法にて測定した。またreal-time PCR法によりABCG2(421C>A)、ABCB1(1236C>T, 2677G>T/A, 3435C>T)の各遺伝子多型を解析した。 ABCB1 haplotypeはdose-adjusted AUCの上昇と関連していた。治療期間中に倦怠感が発現した患者群では、定常状態におけるアキシチニブのAUCが有意に上昇していた(P=0.013)。また有害事象を原因とするアキシチニブの減量・中止に至るまでの期間は、AUCが高い患者群において有意に短かった(median : 35 days vs. not reached, P=0.024)。ABCG2およびABCB1遺伝子多型はアキシチニブの有害事象の発現と直接的な関連は無かった。 進行性腎細胞癌患者におけるアキシチニブ血中濃度の測定は有害事象発現の予測に有用であり、アキシチニブ治療の長期継続に寄与できる可能性が示唆された。
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