徐放性オキシコドンはがん性疼痛をコントロールするためのキードラッグであるが、さまざまな副作用が報告されており、特に嘔気・嘔吐は患者のQOLを大きく下げ、投与継続の障害になることが大きな問題となっている。「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」では、オキシコドンを開始する前に制吐薬を投与した場合、投与しなかった場合と比較して嘔気・嘔吐が減少するといったエビデンスはないとされ、嘔気・嘔吐発現後に想定される機序から制吐薬を選択し投与することとされている。オキシコドンによる嘔気・嘔吐リスクを投与前に正確に予測する方法があれば、患者のQOLを大きく損なうことなく痛みの改善が実現できる。我々はこれまでの研究において、若年者(50歳未満)、非喫煙者、腫瘍の原発部位が消化管であることが嘔気嘔吐のリスク因子になることを明らかにしてきた。 本研究では、症例数を増やし、これまで明らかにされていなかった新たなリスク因子を見出すために詳細なレトロスペクティブ解析を行った。 長崎大学病院において、2008年12月1日から2016年3月31日までに、WHO方式がん疼痛治療法の3段階除痛ラダーに沿って徐放性オキシコドンを新規に導入された入院がん患者455名(男性295名、女性160名)を対象とし、個々の患者背景因子と徐放性オキシコドン導入後3日間の嘔気・嘔吐の有無の関係について、ロジスティック回帰分析を用いて検討を行った。単変量解析にてp<0.10であった因子は、女性、若年者(50歳未満)、非喫煙者、非飲酒者であった。 今後、多変量解析を行い、更に詳細な検討を行った上で、2017年10月に東京で開催される第50回日本薬剤師会学術大会で発表する予定としている。
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