近年、新規経口抗凝固薬(以下NOACと記載)であるダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン及びエドキサバンの4剤が、ワルファリンに代わり得る薬剤として非弁膜症性心房細動、静脈血栓塞栓症の塞栓治療・発症抑制に対して処方される機会が増えてきている。NOACはワルファリンと違い頻回に血液検査による用量調節を行う必要はないが、NOACによる重篤な出血などの副作用を回避するためには、薬剤師がそれぞれの薬剤の減量基準(年齢、腎機能及び併用禁忌薬など)を確実に確認し、問題がある場合には医師に疑義照会することが極めて重要となる。そこで本研究では、NOACが処方される際に、減量基準に関連する検査値及び併用薬を印字したチェックシートを自動で出力するシステムを構築し、そのシステムの使用前後における疑義照会件数、処方修正件数、臨床効果及び副作用について評価し、NOACの適正使用の遂行に貢献することを目的とした。 まずカルテ調査による使用実態調査結果、文献、添付文書などから、NOACの適正使用に必須な検査値及び併用禁忌薬についての情報を精査し、NOACの処方箋発行時に、禁忌、適応、減量基準などの選別した情報を自動で印字するシステムを構築した。本システム導入前後3か月間でのNOACが含まれる処方箋枚数に対する疑義照会件数を比較したところ、導入前は642枚中5件だったのに対し導入後は785枚中17件と約3倍に増加した。疑義照会内容としては、システム導入前では見落としていた事例(禁忌に該当するためNOAC中止、相互作用のためNOAC減量)などが見られた。 以上の結果から本システム導入によりNOACの適正使用に貢献できたものと考えられる。
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