研究実績の概要 |
【研究目的】 本邦の制吐薬適正使用ガイドラインではイリノテカン(CPT-11)が含まれる化学療法の制吐薬として、アプレピタント(APR)+5-HT_3受容体拮抗薬(5-HT_3RA)+デキサメタゾン(DEX)の併用が推奨されている。一方、5-HT_3RAは第一世代と第二世代に大別されるが、どちらを選択するべきかについては記載されていない。そこで、CPT-11を含む中等度の化学療法であるFOLFIRI療法を対象に、グラニセトロン(GLA : 第一世代5-HT_3RA)とパロノセトロン(PAL : 第二世代5-HT_3RA)の有効性、安全性、経済性を比較検討した。 【研究方法】 2010年4月から2015年7月の期間に、長崎大学病院(以下、当院)においてFOLFIRI療法が施行され、APR+GLA+DEX【GLA群】もしくはAPR+PAL+DEX【PAL群】を使用した患者の初回投与時を対象とした。診療録を用いて後方視的に調査し、急性期(24時間以内)・遅発期(24時間後から120時間後)の完全抑制率、有害事象の発現率、制吐目的で予防・救済に使用した薬剤費について調査した。本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施した。 【研究成果】 解析の対象はGLA群14名、PAL群33名であった。完全抑制率は、GLA群では急性期85.7%、遅発期78.5%、PAL群では急性期87.8%、遅発期81.8%であり、いずれも有意な差は認められなかった。また、有害事象の発現率にも差はなかった。一方、制吐関連の薬剤費の平均値は、PAL群 : 28,152.6円、GLA群 ; 14,329.8円とPAL群ではGLA群より有意に高かった(P<0.001)。以上の結果から、PAL使用に伴い患者の経済的負担が大きくなることを考慮すると、FOLFIRI療法施行時の制吐療法としてAPR併用時には、GLAを選択してもよい可能性が示された。
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