研究実績の概要 |
分子生物学的手法を用いた遺伝子コード型センサーのハイスループット選別法の最適化を行い、効率的な蛍光センサーの開発方法の確立を行った。 細胞外刺激により生じるイノシトール1, 4, 5三リン酸(IP3)や細胞内Ca2+濃度上昇は、遺伝子発現、シナプス可塑性や細胞死などの様々な生理現象を制御するため、細胞内のIP3やCa2+濃度変化を検出する遺伝子コード型蛍光センサーは、生理現象の誘導機構の解明には必要不可欠なツールである。所属研究室では、効率的に遺伝子コード型蛍光センサーを開発するために、ランダム遺伝子変導入法と併用した、大腸菌内で蛍光センサーの蛍光変化を従来より高感度で検出できるハイスループット選別法を開発した。このシステムでは、蛍光センサーにペリプラズム移行シグナル(TorA)を付加することで、蛍光センサーをIP3やCa2+などの低分子化合物が透過可能なペリプラズムに移行させ、細胞外から低分子化合物を添加することで、蛍光強度変化を大腸菌内で測定でき、変化率の大きな蛍光センサーを選抜できる。 本研究では、このハイスループット選別法のさらなる効率化を目指し、研究(1)最適なTorAシグナルと発現用大腸菌の組合せの決定、および研究(2)蛍光センサーへの効率的なランダム遺伝子変異導入法の検証を行った。 研究(1)により蛍光センサーを大腸菌のペリプラズムに効率的に移行させることのできる遺伝子発現ベクターの種類、TorAシグナル配列、大腸菌株の組合せを特定した。そして、蛍光センサーのハイスループット選別法として論文を発表した。 研究(2)では、これまでに報告されたランダム遺伝子変異導入法(error prone PCRやヒドロキシルアミン法等)を比較および最適化した。その結果、反応回数を増やすことでError prone PCRにより効率的に遺伝子変異を導入できる事が分かった。
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