様々な生体内液性生理活性因子は、心血管系および代謝系制御の双方において重要な意義を有している。アドレノメデュリン(AM)は、心血管系をはじめ、全身の組織で広く産生される多彩な生理活性を有するペプチドである。AMの受容体CLRには、受容体活性調節タンパクRAMPが結合し、受容体機能を制御している。我々はこれまで、RAMPの中でもRAMP2が、心血管系におけるAMの機能調節に中心的役割を果たすことを報告してきた。一方、AMおよびRAMP2は脂肪組織においても高発現を認めるが、その代謝制御における意義は不明である。 RAMP2ホモノックアウトマウスは胎生致死のため、本研究では成体の得られるRAMP2ヘテロノックアウト(RAMP2+/-)雌マウスを用いて、卵巣摘出による閉経モデルを作成して高脂肪食負荷を行い、閉経後代謝障害におけるAM-RAMP2系の役割を検討した。10週齢雌マウスの卵巣摘出を行い、10週間の高脂肪食負荷を行ったところ、RAMP2+/-では、野生型と比較して体重増加がみられた。RAMP2+/-では、血清インスリンとレプチン値が高く、アディポネクチン値は低下し、インスリン抵抗性が見られた。また、白色脂肪の重量増加、脂肪組織のマクロファージ浸潤、炎症性サイトカインの発現充進を認め、肝臓では脂肪肝や線維化が亢進した。 次に脂肪組織におけるRAMP2の役割を検討するため、脂肪細胞特異的RAMP2ホモノックアウトマウス(A-RAMP2-/-)を樹立した。通常食下において、A-RAMP2-/-は野生型と比較して体重が増加し、白色脂肪組織の重量増加と線維化が見られた。 以上の結果から、AM-RAMP2系は心血管系機能制御のみならず、閉経後代謝障害においても重要な役割を持つことが明らかとなった。
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