研究実績の概要 |
【研究目的】 近年、末梢血中腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells ; CTC)は様々な固形癌における予後マーカーとして重要視されている。現在、上皮マーカー依存的検出法が最も広く使用されているが、腫瘍細胞が血管内へ浸潤する際に上皮間葉転換を起こすことにより、上皮マーカーの発現が減少するという報告も散見される。そこで我々は、癌細胞の不死化に必要とされるテロメラーゼに着目し、テロメラーゼ活性化細胞でのみ増殖能をもつGFP発現制限増殖型アデノウィルスを用いた新たな検出法を確立した(Takakura M et al. Br J Cancer. 107 : 448-54, 2012)。本研究では検出されたCTCを回収し、CTCの遺伝子解析を行うと同時に、上皮マーカーの発現についても検討した。 【研究方法】 インフォームド・コンセントのもとに得られた婦人科癌患者の末梢血5mlを溶血処理し、GFP発現制限増殖型アデノウィルスを感染させた。サイトケラチン(CK)等による免疫染色を追加し、GFP陽性細胞を蛍光顕微鏡下に回収した。検出したCTCが腫瘍由来であることを確認するため、子宮頸癌ではHPV DNAを、子宮体癌や卵巣癌ではp53、KRAS、PTEN等の変異を有する可能性が高い遺伝子をターゲットとし、解析した。まず原発病変の凍結標本からDNA抽出し、目的領域をPCR増幅後、direct sequencingにて遺伝子変異を特定した。ついでCTCのゲノムDNAをWhole genome amplification法にて増幅し、同じ遺伝子変異が存在することを確認した。 【研究成果】 婦人科癌症例45例中CTC陽性例は9例(20%)だった。癌種別では子宮頸癌6例、子宮体癌1例、卵巣癌2例だった。検出したCTC数は計25個で、すべてがCK陰性であった。子宮頸癌6例中5例(83%)のCTCで原発巣と一致したHPVゲノム増幅を認め、卵巣癌2例中1例(50%)のCTCで原発巣と一致したp53遺伝子における点突然変異を認めた。
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