研究目的 : 口腔上皮細胞は微生物をパターン認識する自然免疫レセプターを具備しており、リガンド刺激に応じて様々な抗菌因子を産生する。抗菌因子はディフェンシン類の研究が盛んで、口腔上皮細胞に関しても主流となっている。他方、カテリシジン類のCAP-18/LL-37については、近年抗菌因子としてばかりではなく宿主細胞に対する多彩な作用が報告されている。そこで、キノコに含有される成分が口腔上皮細胞のCAP-18/LL-37産生を促す可能性を検討し、食品由来成分を用いた口腔内の生体防御賦活による口腔疾患予防を目的とする。 研究方法 : キノコ含有成分が口腔上皮細胞に対して、CAP-18/LL-37の産生を促進させるかをリアルタイムPCR法、ELISA法およびWestern blotting法などを駆使して検証した。 研究成果 : 本研究では、キノコ由来β-グルカンが口腔上皮細胞に対して、CAP-18/LL-37の産生を促すことを見出した。しかし、その作用強度は僅かなものであり、病原性口腔内細菌を減少させるほどの結果には至らなかった。そのため、本研究の目的である口腔疾患予防としてはまだ課題が残る。一方、キノコに含まれるビタミンDは体内で化学構造が変換され、活性型ビタミンDとなる。この活性型ビタミンDは口腔上皮細胞に対してCAP-18/LL-37の産生を強く促進させることを見出した。このことから、ビタミンDを摂取することで、口腔内の生体防御を賦活化させ、口腔疾患予防に期待できると考えられる。
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