目的 主成分が炭酸カルシウム(CaCO_3)であるホタテの貝殻は、焼成することにより抗菌活性を有する酸化カルシウム(CaO)になることが知られている。さらに、CaOは食品添加物として人体に影響を及ぼさないことが厚生労働省によって報告されている。これらのことから、われわれは、焼成したホタテ貝殻粉末を含有した義歯を作製することで、義歯自体に抗菌機能を付与することが可能ではないかと考えた。 本研究では、義歯への抗菌機能付与を目的に、まず、焼成ホタテ貝殻粉末の物性評価と口腔内抗菌性評価をもとに、臨床応用の可能性を検討する。 材料と方法 ①用いる焼成ホタテ貝殻粉末の特性評価 焼成ホタテ貝殻粉末(酸化カルシウム)の結晶相を調べるためにXRD測定を行い、走査型電子顕微鏡(SEM)によって粒子サイズや形状を観察した。また、精製水に焼成ホタテ貝殻粉末を0・0.1・1.0・2.5・5.0質量%添加したpHの測定を行った。 ②抗菌試験 唾液検査キット、デントカルトSM(ミュータンス連鎖球菌)、デントカルトLB(ラクトバチラス菌)、カンジダ菌検出用簡易試験薬(ストマスタット)を用いて、細菌培養を行いコロニー数の確認を行った。 すべての抗菌試験後、細菌数測定装置(細菌カウンタ)を用いて細菌測定を行った。 考察・結論 今回使用した市販の焼成ホタテ貝殻粉末のXRD測定の結果、CaOのピークが認められた。このことは、今回使用した焼成ホタテ貝殻粉末は抗菌効果を示すCaOを含んでいることを示している。 口腔内細菌抗菌試験では、焼成ホタテ貝殻粉末の質量%が高いほど強い抗菌効果が認められた。このことから、焼成ホタテ貝殻粉末のCaOが口腔内細菌に対しても抗菌作用を示すことが分かった。よって、われわれの目標とする焼成したホタテ貝殻粉末を含有した義歯を作製することによって、義歯自体に抗菌機能を付与することが可能であると考えられる。
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