研究実績の概要 |
1. 研究目的 核酸アプタマーは、in vitroでのスクリーニングが可能で、配列さえ決定すれば安価かつ容易に入手でき、幅広い検出系に利用可能であるなど、抗体に比べ様々な利点を有している。これらの利点は、主に抗体を使用して体液証明を行う法科学鑑定において利用価値が高いと考えられる。そこで本研究では、核酸アプタマーが体液証明に応用可能か検討するため、精液の指標とされ、既にアプタマーの塩基配列が同定されている前立腺特異抗原(PSA)を標的とし、PSAアプタマーを用いた精液証明法について検討を行った。 2. 研究方法 体液試料(血液、精液、唾液、尿、汗、膣内容物、n=5)の上清をプレート上に固相化し、酵素標識あるいはプライマー結合配列を付加したPSAアプタマーを反応させ、酵素反応またはリアルタイムPCR法により検出を行い、体液交差性等について検討を行った。なお、本研究は日本法科学技術学会倫理審査委員会の承認を得て実施した。 3. 研究成果 PSAアプタマーは精液に反応を示し、精液の希釈に依存して反応の変化が見られたことから、精液中のPSAと反応していると考えられた。他の体液と比較して有意に高い反応を示し、検出における閾値を設定して各体液5試料の判定を行ったところ, 精液5試料全て陽性と判定され、その他の体液はいずれも陰性であった。以上の結果から、PSAアプタマーは精液の証明に利用でき、核酸アプタマーが抗体に代わる材料として体液証明に応用可能であることが示唆された。
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