研究実績の概要 |
本研究は, 小学校体育科のボール運動領域において, グループでの学習として, ボールゲームの学習指導論(Teaching Games for Understanding)をもとに, ゲーム前にチームで作戦を確認する活動を行ったり, ゲーム後にプレー場面の映像を振り返り, 作戦の有効性を話し合ったり, 作戦を修正する活動を行ったりすることが子どもたちの戦術的知識にどのような変容をもたらすのかを明らかにすることを目的として取り組んだ。 研究を進めるにあたって, 作戦の立案・実行・修正過程を行うことに適しているフラッグフットボールを学習の単元として取り上げた。フラッグフットボールに関する子どもたちの戦術的知識の変容を調べるため, 戦術的知識テストを単元前後に実施した。戦術的知識テストは作戦図をもとに各プレイヤーがどのような動き方をするのか, どのようなことに注意するのかについて自由記述させた。授業中はビデオカメラを用いて授業全体の様子と特定のグループの観察を行った。フラッグフットボールに関する戦術を攻撃, 守備に分けて項目の設定を行った。Griffin et al. (2001)のサッカーのカテゴリーを参考にして, 攻撃に関してボール保持者とボール非保持者のそれぞれについて「ボールの保持」「攻撃空間の創出」「攻撃空間の利用」の項目を設定し, 守備に関して「ボール(しっぽ)の奪取」「空間を守る」「チームとしての守り方」の項目を設定し, 計9つの項目を設定した。 研究の成果として, 単元を通して, 子どもたちの戦術的知識が攻撃の項目と守備の項目の全ての項目で向上したことが明らかになった。また, 単元前に実施した戦術的知識の結果による上位群, 下位群ともに単元後に向上が見られた。戦術的知識が向上した要因としては, 授業の中での教師の声かけや子ども同士の関わりが関係したのではないかと推察され, グループによる学習の効果が明らかとなった。
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