研究実績の概要 |
【目的】高齢者における筋肉への負荷の最も小さい座位姿勢を明らかにすることにより、適切な座位姿勢を検討することを目的とした。 【研究方法】虎ノ門カイロプラクティック院に来院する65歳以上の高齢者及び関係者に対し、本研究への参加の同意が得られた57名を対象者に選定した。調査項目として、筋電図、座位の姿勢、日常生活の様子を調べるためのアンケートを実施した。■筋電図計として追坂電子機器製P-EMG plusを用い、対象者を背もたれのない椅子(座面までの高さ38cm)に座らせた状態で、脊柱起立筋、腹直筋、僧帽筋の3筋の最大随意収縮を2回、4段階の姿勢(起立、後傾、ニュートラル、中立)に分けて3筋の筋電図を各1回計測し、2回の最大随意収縮別(%MVC)の最大値を採用した。■姿勢はジースポート社製姿勢解析機器ゆがみーるにより、対象者の肩峰、上前腸骨棘、上後腸骨棘の3カ所にマーカを付け、筋電図と同時に矢状面を撮影し、腰―耳角、肩―耳角、骨盤前傾角を測定した。■収集したデータから、4段階の姿勢毎に、3筋の%MVCを従属変数、矢状面の3角度を独立変数とした重回帰分析により、座位姿勢が筋負荷に及ぼす影響を分析した。 【結果】統計解析の結果、座位姿勢が筋負荷との間に有意な関連性が、起立時(β=0.332, P=0.014)、後傾時(β=0.295, P=0.044)、中立時(β=0.325, P=0.021)の骨盤前傾角と脊柱起立筋にみられた。これらの独立した関連性を調べるために、性別、年齢、BMI、GDS短縮版得点(抑うつ度)、関節炎既往歴、脊椎系疾患既往歴、骨粗鬆症既往歴、脳卒中既往歴を調整した結果、起立時及び後傾時の骨盤前傾角と脊柱起立筋との有意な関連性が認められた。 【考察】本研究から、高齢者において骨盤前傾角が大きいほど、脊柱起立筋の負荷が大きくなることが明らかになった。また骨盤前傾により、脊柱起立筋に適切な筋負荷を掛けながら、腹直筋及び僧帽筋には負荷をかけない適切な座位姿勢を検討する基礎資料が得られた。
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