研究課題
基盤研究(B)
アフリカ熱帯雨林地域において、主要なタンパク源としての野生動物の狩猟と、その保全活動は対立しがちである。この問題はグローバルな関心(生物多様性の保全)とローカルな関心(住民の生活の糧)の対立として先鋭化してきた一方で、仮に野生動物が枯渇すれば住民にとっても重大な問題となる以上、両者が問題意識を共有できるはずの問題でもある。そこで、野生動物の生態に関する生態学的研究と住民の資源利用と在来知に関する人類学的研究を実施し、馴染みのあるタイプの知識にもとづくことで住民が主体的に運用でき、科学的にも高い精度を保つことで保全当局にたいするアカウンタビリティを備えた、狩猟動物モニタリングの指標を提案した。
本研究の意義は、ハンターが日々の狩猟実践をとおして蓄積してきた野生動物の生態に関する在来知を重視し、これまで科学的知見のみが重視されてきた野生動物マネジメントの枠組みのなかに、野生動物マネジメントの核となるアクターとして地域住民の役割を明確に位置づける点にある。在来知を重視する意図は、単に、それが限られた研究資源のもとでなされる科学的生態調査を補完しうるという点にのみあるのではなく、住民と科学者が問題意識を共有したうえで、双方が対等なかたちで、主体的に野生動物マネジメントに参画するための基盤として必須の前提であるという認識にもとづいている。
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