研究課題
基盤研究(B)
日台共同で東シナ海に分布するブリ属魚類のカンパチ(Seriola dumerili)の共同調査を行った。本研究期間中に,総計362個体を採集し,これらのうち産卵群の遺伝的特性を反映すると予測される当歳魚67個体を選別し,耳石による日齢査定,およびミトコンドリア調節領域DNAとDNAマイクロサテライトの解析に供した。その結果,本種は台湾北岸から東シナ海南部の陸棚縁辺部で1~4月に産卵すると考えられた。ミトコンドリアDNAおよびマイクロサテライトDNA解析(4マーカー×2セットのマルチプレックス解析)の解析から,東シナ海に出現するカンパチの当歳魚は単系群であると判断された。
東シナ海は,日中韓台の4カ国が海洋水産資源を利用する国際水域であるが,各々の国の利害関係や政治的関係によって国境を跨がった水産資源共同調査の実施は困難を極めてきた。この理由により,亜熱帯性ブリ類の産卵水域に我が国からアクセスすることも困難であった。本研究課題によって,台湾の水産研究機関と国際共同研究を立ち上げ,亜熱帯性ブリ類の産卵水域の調査が可能となり,謎の多かった亜熱帯性ブリ類の初期生態研究に大きな進展をみた学術的意義は大きい。さらに,このように実効性に富んだ国際水域を跨がる回遊魚の共同調査体制を構築した社会的意義も極めて大きいと自己評価している。
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