研究課題
若手研究(A)
発話音声に対して知覚する好感度を計測し,改善を促す発話訓練システム構築に向けた一連の研究を実施した.実験から,音声の話速や間の取り方には適切な範囲が存在し,高さと音色についても好感度に対応する特徴量が得られた.本研究では,Vocoder技術を活用し,高さを制御し,音色については,声の明るさに概ね対応するスペクトル重心を制御する信号処理技術を開発した.有効性を検証するため開発した技術を用いた主観評価を実施し,期待どおり入力音声の好感度が改善できることを確認した.これらの技術を組み込んだ発話好感度計測システムのプロトタイプを実装し,実環境でも動作することを確認した.
本研究は,音声認識のようにテキスト情報を扱うものではなく,音声に対して知覚する好感度という,被験者に依存する感性情報を扱うという挑戦的なテーマである.現在の音声認識・合成技術の性能は,すでに人間と等価な水準に達しつつあるが,このような感性情報の計測・制御に関しては,被験者に対する依存性もあるため研究事例そのものが相対的に少ない状況にある.一方,発話訓練には社会的なニーズがあり,コミュニケーションの支援技術は今後需要が増加することが期待される.本研究で得られた成果は学術的にも価値があり社会的にも還元しやすく,今後類似した研究を進める指針として役立つと考えられる.
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