研究課題
若手研究(A)
虚弱の原因となる住環境要素に着目するため、西日本地域において繰り返しデータ測定を伴うフィールド調査に基づいたマルチレベル分析を実施した。①住宅内では寒冷環境に暴露されることによって即時的にも蓄積的にも、筋力の代表値である握力の低下に結びつくことを確認した。寒冷日や寒冷な住宅では座位時間が長くなること、夜間尿回数が増加すること、認知機能が低下することも確認しており、これらの蓄積が虚弱に結びつく可能性が示唆された。②地域環境においては、居場所を有していない者やソーシャルキャピタルが低い者は、要介護リスクが上昇することを確認し、同時に近隣の花壇などの景観要素が外出行動を促進させることが示された。
超高齢化社会を迎える我が国には、健康長寿延伸という避けられない命題がある。その点から、人々が日常を過ごす住環境に潜む虚弱リスクを明らかにし、個人の行動変容に依存しない環境改善を果たすことで、人々の健康寿命延伸とQOL向上を実現することが重要と考えられる。本研究では、建築環境工学をベースとしながらも、運動疫学や老年医学で重要とされる虚弱指標に着目し、近年、医学分野で必須とされる多変量解析手法であるマルチレベル分析を実施することで、その関係性を明らかにしたことに学術的意義がある。健康という国民の関心を呼ぶテーマから、寒冷環境という見過ごされてきた国民課題を示唆する社会的意義もあると考えられる。
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日本建築学会環境系論文集
巻: 84 号: 760 ページ: 577-586
10.3130/aije.84.577
130007670343