研究課題
若手研究(A)
本研究では植物ウイルスの生態における社会的側面を研究し、それを標的とする植物ウイルス防除技術を開発した。具体的には、植物ウイルスが5以下と少ないゲノム数で細胞感染することが普遍的であり、これによりウイルスが集団からフリーライダーを排除することを実験およびシミュレーションで明らかにした。また3分節ゲノムをもつキュウリモザイクウイルスで各分節の複製バランスが保たれる仕組みを説明するシミュレーションモデルを作成した。さらにキュウリモザイクウイルスが多数決型の意思決定システムをもつことを明らかにし、このシステムを標的として細胞間移行を阻害する改変型人工ウイルスRNAを開発した。
ウイルスは非常に単純な生物であるが、同じ宿主細胞内のウイルスゲノム間で遺伝子産物の共有が生じることから、ウイルスゲノム間に様々な社会的関係性が生じる。本研究はこの点に着目して行った。研究の結果、遺伝子産物に対するフリーライダーを排除するための「社会ルール」を植物ウイルスが普遍的に有することや、遺伝子産物をめぐってウイルスが多数決型の意思決定を行うことが示された。この成果は独創性が高く、植物病理学・ウイルス学のみならず社会学的にも大きな意義がある。また植物ウイルスは一般に防除が非常に難しいが、本研究で得られた知見を活かして新発想の防除法開発につながる基盤技術を確立することができた。
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