研究課題
若手研究(A)
病因となる遺伝子変異の多くは特徴的な代謝変化を伴う。本研究では、13C標識した生体分子のNMR信号を数万倍に励起することで、遺伝子変異に依存した代謝変化を特異的に検出する核磁気共鳴画像(MRI)技術の開発を行った。一重項の水素ガスの付加反応を用いて13C NMR信号を生体分子により5~10万倍励起する技術開発に成功した。超偏極誘導した13Cピルビン酸を担がんモデルに投与し、乳酸脱水素酵素の遺伝子発現量に応じた乳酸の生成を確認した。がん抑制遺伝子であるフマラーゼやコハク酸脱水素酵素の変異を検出する13Cフマル酸では10万倍以上のMRI信号の励起を達成し、代謝MRIの撮像にも成功した。
多くの急性・慢性疾患に遺伝的要因が関与する。先天的に受け継いだ遺伝子多型や変異であれば血液検査等により容易に検出できるが、突然変異等により後天的に獲得した遺伝子変異は、体内の奥深く、特定の臓器や組織のみに偏在し、その特定には侵襲的な生検採取が必要となる。もし変異により起こる特徴的な代謝変化をMRIで検出できれば、非侵襲的に後天的遺伝子変異の種類、位置、量を知ることが可能となる。超偏極13C MRIは13C標識した任意の化合物の生体内代謝を動的に計測する最先端技術である。本研究成果は、非侵襲的遺伝子診断としての価値に加え、数億円に上る現行の超偏極13C MRI導入コストの低減にも繋がる。
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