研究実績の概要 |
本研究の一年目である本年度は、アプタマーで修飾した電気化学センサーチップを作製し、測定条件を最適化するとともにウイルス検出性能を評価した。サイクリックボルタンメトリー(CV)および矩形波ボルタンメトリー(SWV)により電気化学測定のプローブ(酸化還元体)および電極の最適条件を決定した。 まず、酸化還元体を比較検討した。電極反応の特性を把握するためのCVプロファイルを複数の条件で比較したところ、緩衝電解液(1M塩化ナトリウム+リン酸緩衝液, pH=7)に4mM K3[Fe(CN)6]を添加した場合に電流値が最大となり、この条件が最適であることが明らかとなった。 次に、作用電極に金ナノ粒子修飾スクリーンプリント炭素電極(GNPs-SPCE), スクリーンプリント炭素電極(SPCE)およびスクリーンプリント金電極(SPGE)の3種類の異なる材質の小型電極表面上での電気化学反応を比較した。GNPs-SPCEとSPCEは同様の電気化学測定プロファイルが認められたため、GNPs-SPCEの電極反応には炭素電極表面上の反応の寄与が卓越していると考えられた。SPGEを用いた場合に最も高い反応性が認められ、本研究の電気化学アプタセンサー開発にあたってはSPGEが最適電極チップであると判断した。 以上の検討結果から最適と判断された測定条件(酸化還元体としてK3[Fe(CN)6]を使用し、電極チップとしてSPGEを使用)を用いて、SWV測定によるマウスノロウイルス(MNV)検出能を評価した。MNVを添加すると添加濃度に応じて速やかに電流値が下がり、MNV検出することが可能であることを示した。 本研究では、電気化学アプタセンサーによるノロウイルスの高感度・迅速検出を実現するための最適測定条件に関する新たな知見を得ること、およびこのシステムを用いたウイルスの検出可能性を示すことに成功したと言える。
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