本研究は、いわゆる減責制度の運用方法を探求したものである。現在の日本法においては、条文に規定される被害者の過失以外の減責原因も認められる傾向にある。しかし、このような制度の運用は、どのように正当化されうるか。 この点、フランス法の展開を参照すれば、次の示唆を得ることができる。不法行為者の“責任”という観点に着目するならば、減責制度を幅広く運用する余地も認め得る。しかしながら、被害者への“損害賠償”という観点に着目するならば、減責制度は厳格に運用されることになる。 今後は、損害賠償が問題となる制度がどちらの視点に基づいたものか、という点に立ち返った検討が求められることになる。
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