口唇口蓋裂治療では、顎裂部の骨欠損を低侵襲に補填し、患児への負担を軽減する治療法が必要とされている。近年我々は、BMP-2とRANKL結合ペプチドを併用し、注射によって骨を造成する新規骨造成法を開発した。本研究では、その新規骨造成法を口蓋裂治療へ臨床応用するための基礎的研究基盤の確立を目指している。口蓋裂治療への応用においては、新生した骨の長期的な維持の可否を明らかにする必要があるが、これまでにRANKL結合ペプチドにより新生された骨が長期間維持されるか否かは検討されておらず、骨を新生しても機能させなければ吸収されることが予想される。そこで本研究では、すでに報告している方法でマウスの上顎の切歯と第一臼歯の歯隙に骨を新生させ、その後、矯正力により第一臼歯をその骨新生部に誘導し、新生骨の経時的変化を観察する計画を立てた。しかし、マウスの第一臼歯に矯正力をかけることにより得られた移動距離は約150μmであり、新生骨部に歯牙を牽引するためには不十分であった。よって、新生骨を機能させる他の実験系を確立する必要があった。そこで、咬合力の負荷により元来機能している骨に対し欠損を作成し、同部に新生させた骨であれば、新生骨を機能させることが可能であると考えた。 本年度はマウス臼歯に糸を結紮することで歯周炎を引き起こすという、歯槽骨吸収モデルを確立するための実験を行ってきた。様々な結紮期間における骨吸収の程度や状態の相違を、X線学的、組織学的に解析した結果、2週間の結紮により、歯槽骨吸収モデルとして十分な骨吸収が得られることが明らかとなった。そして、14週齢マウス5匹の上顎第二臼歯に糸を2週間結紮した場合において同程度の骨吸収が認められ、再現性についても確認することができた。 本実験により確立されつつある歯槽骨吸収モデルは、新生骨の機能を検討するモデルとして有用なモデルとなる可能性がある。
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