近代日本の地域間人口移動の実態を明らかにする新たな方法論として、当時運用されていた寄留制度に基づいて寄留者が届け出た「寄留届」の分析を行った。具体的には、愛知県の山村である東加茂郡賀茂村(現豊田市の一部)の、大正期の約2,000人分の寄留届をデータベース化し、当時の労働力移動を中心とする山村地域からの人口流出の実態に関する知見を得た。とくに、当時の移動は完全に都市部を指向しており、若年層が主体であったことや、中でも近隣都市の繊維工場の寄宿舎に永住しない形で寄留する女工の寄留が多数を占めていた実態が明らかにされた。
|