研究課題
研究活動スタート支援
本研究の最終目標は、免疫学的観点から個々の患者に最適な医療を提供することで、難治性である消化器癌の治療成績向上に寄与することである。平成28年度は、主な研究テーマである「肝細胞癌に対する抗腫瘍免疫反応の意義の解明」について、これまでに構築した研究実施体制に基づき、別途策定した研究計画に沿って、以下の①~③の研究を実施した。①:当院にて肝細胞癌と診断されて切除が行われた肝細胞癌患者の同定、②:病理診断後に保存された病理検体の病理学的レビュー及び薄切切片の作成、③:②のうち、102例について、病理検体を用いて、肝細胞癌局所に浸潤した免疫細胞に発現する表面抗原の網羅的な染色(延べ2000枚以上の免疫染色の実施)。一部の表面抗原については、平成29年度に実施予定であった、治療後の生存期間との関連についての予備的な検討を開始しており、発現が認められる免疫細胞については、腫瘍周囲及び周囲内部への浸潤が、癌切除後の無増悪生存期間及び生存期間と関連している知見が得られた(未発表データ)。当該所見は、これまで、腫瘍因子のみならず、患者の抗腫瘍免疫反応により、治療効果や患者予後が異なる可能性を示唆する所見である。今後、必要に応じて更に症例を蓄積した上で、残りの表面抗原についても同様に解析した結果に基づき抗腫瘍免疫応答の違いによる肝細胞癌の新たなグルーピングを行い、患者背景因子、治療効果及び患者予後との関連を詳細に検討することにより、治療選択に際して新たな有益な情報を付加することが可能になると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度は、主な研究テーマである「肝細胞癌に対する抗腫瘍免疫反応の意義の解明」について、これまでに構築した研究実施体制に基づき、別途策定した研究計画に沿って、以下の①~③の研究を実施した。①:当院にて肝細胞癌と診断されて切除が行われた肝細胞癌患者の同定、②:病理診断後に保存された病理検体の病理学的レビュー及び薄切切片の作成、③:②のうち、102例について、病理検体を用いて、肝細胞癌局所に浸潤した免疫細胞に発現する表面抗原の網羅的な染色(延べ2000枚以上の免疫染色の実施)。以上のように、腫瘍に浸潤した免疫細胞の数、特性、局在を評価することで、肝細胞癌局所に浸潤した免疫細胞に発現する表面抗原の網羅的なプロファイルが得られた。一部の表面抗原については、平成29年度に実施予定であった、治療後の生存期間との関連についての予備的な検討を開始しており、発現が認められる免疫細胞については、腫瘍周囲及び周囲内部への浸潤が、癌切除後の無増悪生存期間及び生存期間と関連している知見が得られた(未発表データ)。また、並行して、研究課題に関連した消化器疾患に関する臨床研究データの取り纏めを行っている。本年度は2つの国際学会を含む4つの学会にて口演発表を行い、論文発表を行った。
本研究では、別途策定した研究計画に沿って、下記①~③の研究を平成29年度に実施する予定である。①:末梢血単核細胞(PBMC)についての免疫細胞の定量的評価及び腫瘍関連抗原(TAA)に対する特異的な免疫反応の検討、②:患者の背景因子、治療効果、患者予後等に関する情報収集、③:腫瘍組織を皮下へ移植したモデルマウスを用いた抗悪性腫瘍剤の抗腫瘍効果の検討。①について、肝細胞癌患者から得られたPBMCについて、表面抗原の免疫染色を行うとともに、各種免疫学的アッセイ法(ELISPOTアッセイ、CTLアッセイ、テトラマー法)により、TAAに対する特異的な免疫反応の有無を評価する。得られた結果を、平成28年度の検討でグルーピングされた患者群間で比較し、抗腫瘍免疫反応と関連を明らかにする。②について、肝細胞癌患者の患者背景(臨床的因子:年齢、性別、肝予備能等、病理学的因子:肉眼形、大きさ、分化度、脈管浸潤等、治療効果:無増悪生存期間、患者予後:全生存期間)に関する情報を収集する。得られた結果を、平成28年度の検討でグルーピングされた患者群間で比較し、抗腫瘍免疫反応との関連を明らかにする。③について、肝細胞癌を皮下へ移植したモデルマウスを作成し、既存治療薬(Sorafenib、CDDP等)及び開発中の免疫治療薬(Nivolumab等)を投与して抗腫瘍効果を検討する。得られた結果を、平成28年度の検討でグルーピングされた患者群間で比較し、抗腫瘍免疫反応との関連を明らかにする。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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