非線形超音波法を用いた積層構造の層間欠陥(接着不良や閉じたはく離)の高感度検出法の確立を目的として,本年度の研究では積層構造の層間における二次高調波(入射波周波数の2倍周波数を有する波)発生挙動の理論解析および予備実験を実施した. 理論解析では,任意の積層数を有する積層構造を仮定し,各層間界面を非線形スプリング界面でモデル化した.そして,伝達マトリクス法(周期構造中の線形な超音波伝搬を取り扱う理論解析手法)と摂動解析(弱非線形近似)を組み合わせることで,縦波を積層構造に垂直入射したときの反射波・透過波に含まれる二次高調波振幅を理論的に求めた.その結果,二次高調波の振幅は入射周波数,積層数,非線形界面の位置に強く依存することが明らかとなった.また,すべての層間界面が同一の非線形性を有する場合に,二次高調波振幅が界面数とともに単調増加するような周波数帯が生じることも明らかとなった.本解析で得られた結果をまとめ,海外論文誌Wave Motionへ投稿を行った(2017年4月29日現在査読中). 次に,PC,オシロスコープ(信号発生器内臓),信号増幅器,圧電素子を用いて高調波測定系の構築を行った.信号発生器で生成する電圧波形や測定した信号の保存等はすべてMATLABで制御できるように設定した.二次高調波の測定を行うには,大振幅の超音波を発生させる必要がある.そこで予備実験として,アルミニウムブロックに対して超音波透過波の測定を行い,本測定系で発生可能な超音波の最大振幅について検討した.その結果,最大200 Vpp程度の電圧を波形にひずみが生じることなく圧電素子に印可できることがわかった.
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