研究課題/領域番号 |
16H06905
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
脳神経外科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐俣 文平 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (80779166)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2016年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2016年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 再生医療 / iPS細胞 / 細胞移植 / 皮質脊髄路 / 細胞表面抗原 / フローサイトメトリー / 細胞移植治療 / 大脳皮質 / 細胞選別 |
研究実績の概要 |
ヒト多能性幹細胞を用いる細胞移植療法では、脳卒中や頭部外傷によって失われた大脳皮質の神経ネットワーク再生への応用が期待できる。たとえば、皮質脊髄路を構成する第5層錐体細胞が傷害を受けると、片麻痺等により患者のQOL(Quality of Life)は著しく低下する。この錐体細胞を移植することによって皮質脊髄路の再生が期待されるが、これまでにヒト多能性幹細胞から第5層錐体細胞のみを作製する方法は開発されていない。そこで本研究では、ヒト多能性幹細胞から大脳皮質細胞を誘導し、さらに第5層錐体細胞を選別する技術の開発を目的とする。 胎仔マウスの運動野組織を用いた移植実験から、皮質脊髄路を再構築するにはCTIP2陽性細胞が必要であることが知られている。そこで、CTIP2プロモーターの下流にレポーター遺伝子を組み込んだCTIP2:GFPノックインマウスES細胞を樹立した。そしてCTIP2:GFPノックインマウスES細胞の網羅的遺伝子発現解析から、CTIP2:GFP陽性細胞群で発現が高い細胞表面抗原としてL1CAMを同定した。L1CAMは胎仔マウス前頭葉の皮質板と中間層で発現が高く、抗L1CAM抗体を用いた染色・選別によってCTIP2陽性細胞が濃縮できた。これらの結果はL1CAMの発現を指標にした細胞選別操作によって第5層錐体細胞が濃縮できることを示しており、ヒト多能性幹細胞由来の第5層錐体細胞の精製技術開発への応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず、CTIP2プロモーターの下流にレポーター遺伝子を組み込んだCTIP2:GFPノックインマウスES細胞を樹立した。この細胞をWnt阻害薬の存在下で浮遊培養することにより、大脳皮質のマーカーであるFOXG1を誘導することができた。CTIP2は大脳皮質のみならず、線条体等でも発現が認められるが、この分化誘導方法によって得られたGFP陽性細胞のほとんどはFOXG1を発現する大脳皮質細胞であることを明らかにした。そして、CTIP2:GFP陽性細胞とCTIP2:GFP陰性細胞の網羅的遺伝子発現解析から、CTIP2:GFP陽性細胞で特異的に発現する細胞表面抗原としてL1CAMを同定した。L1CAMは胎生14日齢マウスの皮質板と中間層で強く発現しており、成体マウスではその発現が減少する。この結果を基に、胎生14日齢マウスの前頭葉を用いて抗L1CAM抗体による標識・選別を行ったところ、CTIP2陽性細胞はL1CAM陽性細胞集団に濃縮されることが明らかになった。また、中間層のマーカーであるNrp1やカハール・レチウス細胞層のマーカーであるReelinについてもL1CAM陽性細胞集団に濃縮されることが遺伝子発現解析から分かった。その一方で、脳室帯のマーカーであるPax6やTbr2の遺伝子発現はL1CAM陽性細胞集団で低下していた。
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今後の研究の推進方策 |
上で述べたように、L1CAMの発現を指標にした細胞選別によって胎仔マウス由来の第5層錐体細胞が濃縮できることが明らかになった。今後は、同様の結果がヒト多能性幹細胞由来の大脳皮質細胞でも認められるか否かについて検証する予定である。その後、選別した細胞を大脳皮質傷害マウスの脳内に移植することによって、皮質脊髄路の再生が促進されるか否かについて検討する。その一方で、細胞移植に適した時期も検討する必要がある。移植細胞の生着や軸索新生の点において、第5層錐体細胞に分化した細胞を移植した方が良いのか、またはその前駆細胞を移植した方が良いのかは分かっていない。胎仔マウスの脳室帯には、将来、第5層錐体細胞に分化する細胞が含まれているので、移植実験では未選別群、L1CAM陽性細胞群、L1CAM陰性群のそれぞれを移植することにより、細胞選別の有効性と安全性を比較検証する予定である。
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