研究実績の概要 |
自発休眠打破機構の解明および少低温要求性ニホンナシ品種の育成を目的として,少低温要求性タイワンナシ横山とニホンナシ系統TH3の後代であるF1およびF2個体群の自発休眠特性について調査を行った.その結果,低温要求量を決める遺伝要因として量的形質遺伝子座が存在すること,並びにF2個体群においても低温要求性の多少が異なる個体が存在することが明らかとなった. そこで,F2個体群から選抜した少低温要求性および多低温要求性個体を用いて,次世代シーケンサーによるRAD-Seq解析を行った.de novoアセンブリにより,1,981,120のcontigが得られた.コンティグ内での変異コールを行った結果,タイワンナシ横山とニホンナシ系統TH3との間で56,719の多型 ( SNPsやINDELs ) が同定され,そのうち横山のみが保有していた多型は23,083個,TH3のみが保有していた多型は8,803個であった.また,残りの多型の中からは少低温要求性F1個体がヘテロで保有する17,162個の多型を選抜した.さらに,両F2グループ間で得られたSNP-indexをもとに(index≧0.8)少低温要求性に関与する変異箇所の候補を50箇所に絞り込んだ.これらの変異箇所についてblastnによる解析を行ったところ,NAC-domain proteinをコードする遺伝子との高い相同性を示す領域が確認された. また,横山とTH3のコンセンサス配列をもとに作成した系統樹からは,横山の配列がセイヨウナシよりチュウゴクナシに近いという結果が得られた.これまでの解析では,横山のS遺伝子型の1対がセイヨウナシで多くみられるSe型であることを確認している.
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