研究課題/領域番号 |
16H07211
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
制御・システム工学
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
今村 誠 東海大学, 情報通信学部, 教授 (30780291)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2016年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2016年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ビックデータ分析・活用 / データ工学 / 予知保全 |
研究実績の概要 |
提案する研究の目的は、統計モデルと物理モデルを統合した新たな因果関係表現に基づく時系列データマイニング方式の確立により、機器の故障予測の精度を向上させることにある。平成28年度は,提案書の内容に従って,2年計画の初年度の位置付けで,「研究の有用性と新規性の確認」と「研究のコアアイデアの設計・試作」を完了した。 (1) 研究の有用性と新規性の確認: 産業界へのヒアリングを通じたニーズ調査と,論文や書籍による技術調査を通じて,提案する研究の有用性と新規性を確認した。また,技術結果の一部をサーベイ記事「機器予知保全のための機械学習技術の動向」と「Cyber Physical Production Systemsの動向」としてまとめ,各々,「電気学会 知覚情報研究会(2016年10月)」と「情報処理学会 情報システムと社会環境研究会(2016年12月)」に投稿発表した。 (2) 研究のコアアイデアの設計・試作: (i) 「通常時のデータ特性」と「故障時のデータ特性」の差異を分析することにより,研究の課題を明確にした。(ii) 産業機器の実データに対する故障予測の実験と評価を通じて,本研究の新規部分である「統計モデルと物理モデルを統合した新たな因果関係表現」を実現する上でコアとなるアイデアである時系列の二つのデータ特徴量(「パターンの時間変化を表現する時系列連鎖」,「不規則な上下振動特性」)を明確にした。前者は共著(第二著者)で国際学会に投稿した(2017年2月,4/28時点査読中),後者は2017年度の上期に国内論文誌に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案書中の研究計画に従って研究を進めており,おおむね順調に進展している。以下,1/4半期毎の進捗内容を報告する。 (1) 4 月~6月:技術と産業の現状把握と課題抽出:(i) 機器予知保全のための機械学習技術の全体的な動向と,因果関係表現に基づく時系列データマイニング技術を調査し,提案方式に新規性があることを確認した。調査結果の一部を「電気学会 知覚情報研究会(10/26開催)」に投稿した。(ii) 企業の現場における機器予知保全ニーズを聴取することにより,物理モデルと統計モデルを統合しした予知保全により,検知精度の向上だけでなく,検知理由を説明する能力も向上してほしいとのニーズが高いことを確認した。 (2) 7月~9月:評価用データ整備,方式設計: (i)「サンサー点数や部品数などの規模」と「設計が拠り所とする物理法則」が異なる数種の産業機器・産業設備を選択し,協力先企業にて評価用データを収集いただくと共に,「通常時のデータ特性」と「故障時のデータ特性」の差異を分析した。(ii)上記分析結果に基づき,通常時と故障時の差異の表現方式を検討する過程で,従来の特徴量ではうまく表現できない二つのデータ特徴量を新たに見出し,上記の特徴を形式的に定義すると共に,特徴量を抽出するアルゴリズムを設計した。 (3) 10月~12月:方式の試作: 上記の二つの特徴量を抽出するアルゴリズムを試作した。 (4) 1月~3月:方式の試作: (i)実データを模擬したダミーデータに対して,試作したアルゴリズムを適用・評価することにより,協力企業とのディスカッションを通じて,提案方式の有用可能性を確認した。(ii) 特徴量「パターンの時間変化を表現する時系列連鎖」の成果については,共著(第二著者)で国際学会に投稿した(2017年2月,4/28時点査読中)。特徴量「不規則な上下振動特性」の成果については,2017年度の上期に第一著者として国内論文誌に投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成28年度に試作した統計的な特徴量を,機器設備の設計者/保守者がもつ故障に関するドメイン知識 に組み込むことにより,統計モデルと物理モデルを統合した因果関係表現を定義し、その表現に基づく故障予測方式を設計・試作・評価していく。 今後の研究の展開の方向性としては,以下がある。 (1)物理モデルを用いたデータ特徴抽出: 28年度は,通常と故障とのデータの振る舞いの差異の分析に基づいて,特徴量を定義した。今後は,微分方程式等で表現された物理モデルの解の特徴に基づいた特徴量を検討していく。この検討により,電流,温度,振動,圧力などの物理特性に応じたデータ特徴抽出が可能になることが期待できる。 (2) ドメインに特化した統計/物理モデル統合方式: 「ドメインごとの機器特性の差異」や「対象変数の数の大小」などの差異を反映した統計/物理統合のマイニング方式を検討していく。アルゴリズムをドメイン横断の共通部分と個別部分に分離することにより,方式のモジュール化を志向する。 (3) 大規模システムへの対応: プラントなど巨大なシステムを対象として,対象センサー数が100以上,かつ,データ間の相互依存関係が複雑な多変数のデータ間の依存関係を分析していく。
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