研究課題
研究活動スタート支援
本研究では薬剤をはじめとする有機化合物とグラフェンオキシドとの親和性解析をすることを目的とした。薬剤は高価であるため、まず安価な有機分子を用いた。グラフェンオキシドは親水部と疎水部をもつため、分子との相互作用はミセルと類似した挙動を示すと考えられる。そのため、基本となる手法や実験条件については寺部らによって報告されているミセル伝導クロマトグラフィーを参考にし、グラフェンオキシドと中性分子のフェノール、レゾルシノール、ナフトールの相互作用の検討を行った。分子の溶出順序は上記のとおりで、一番溶出の遅いナフトールが最も強くグラフェンオキシドと強く相互作用していることが示唆された。しかし、ピークの溶出位置の変化が溶出時間9分に対して30秒程度と比較的小さく、より変化を大きくするためにグラフェンオキシドの濃度を上昇させるとグラフェンオキシドがもつ電荷により、電気浸透流の大きさに変化が起きる事が分かった。この問題は電気浸透流速度を電気浸透流マーカーを基準に試料の溶出時間を補正することで解析可能であると考えられる。モーメント法はピークの分散から速度情報を得るが、分子間相互作用項の他に拡散項・試料注入・ジュール熱等の寄与がある。今回実験を実施する中で試料注入の寄与が想定よりも大きく無視できないため、これを補正する方法を確立する必要が生じた。試料注入方について、圧力による注入法と電気的注入法を検討した。圧力による注入法において、試料の注入時の圧力を変化させた際の分散をプロットし、圧力が0となる様に外挿することで試料量が0の時の分散を見積もる方法を確立した。
3: やや遅れている
今回の研究内容は(1)グラフェンオキシドと分子との相互作用に関する部分と(2)モーメント解析法に関する部分がある。グラフェンオキシドと分子との相互作用については種々の有機化合物の相互作用を確認しており、概ね順調に進んでいる。グラフェンオキシドと有機化合物との相互作用が他の相互作用に比べて弱いため、グラフェンオキシドの濃度を増加させる必要があることが分かっており、実験方法の見通しも立っている。モーメント法は確立されて間もないため、理論を実験系に適用し、検証することを本研究と並行して行っている。モーメント法はピークの分散から速度情報を得るが、分子間相互作用の他に拡散・試料注入・ジュール熱等の寄与によってもピークの分散は増大する。これまで、拡散と分子間相互作用が主な寄与であるとし、試料注入による分散の増大はハーゲン・ポアズイユ式を適用して見積もっていたが、理論式の値と実験の値で隔たりがあることが分かった。これを解決するために実験的な方法の確立と理論的な検証を行った。正確な速度定数を得る手順の見直しが必要になったためやや研究の進捗に遅れが生じているが、方法論の改善につながっている。
平成29年度、若手Bが採択となり当該課題の翌年度の交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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