研究課題/領域番号 |
16H07274
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
文化人類学・民俗学
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
相馬 拓也 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (60779114)
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研究期間 (年度) |
2016-08-26 – 2018-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2016年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2016年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | モンゴル西部 / アルタイ山脈 / 伝統知 T.E.K. / 遊牧民 / 牧畜社会 / 環境適応術 / ホブド県 / ヒューマン・エコロジー / 人文地理学 / 環境適応戦略 / 極北系モンゴル遊牧民 / 伝統知/在来知 |
研究実績の概要 |
本研究は、極北系モンゴル遊牧民の極限環境下における環境適応戦略の解明を目的としている。現地では古より受け継がれてきた生存戦略・減災術の伝統知(TEK)が運用されてきた。本研究では、次の3つの調査系統を実施し、伝統知の詳細な体系化を試みている。系統①:極限環境下で生き抜く伝統知の記録・収集、系統②:家畜行動と牧畜生産性の特定、系統③:家畜管理技術の計数化・可視化 フィールドワークでは、2016年7~8月に初動調査を実施し、同年10月、12月、2017年1~2月の調査によりデータ収集を行った。具体的には、調査系統①T1~T3では牧畜世帯50家族に対面式の構成的インタビューを実施した。この聞き取り調査により、①家畜管理技術、②減災術、③移動頻度・適地選定プロセス、④禁忌・伝承、などの生存戦略と環境適応術を宿したオーラルヒストリー49件を収集した。また伝統的な薬草利用とその知識については、SS1/SS2であわせて41件を特定した。調査系統③T4~5では、SS1~SS4居住の12名11日間の活動量・労働投下量測定を実施した。方法論としての有益性を確認した。また対象地で調査を進める過程で、遊牧民の家畜をめぐるユキヒョウによる獣害被害の現状が明らかとなった。そのため、極限環境で生じる自然災害の一部として追加調査を行った。 初年度調査により、【目的①】 「遊牧民の在来知の体系化」に要する多くの知見が得られた。これにより環境適応力と減災力を強靭化した「環境共生型牧畜」の確立に一石を投じることとなる。さらに【目的②】 「極限環境下での生存戦略の解明」に必要とされる基礎的なデータ収集および方法論の妥当性が確認された。今後は、異なる居住環境下に応じた環境適応術を横断的に解明し、社会評価の新たな研究モデルを提示する。とくに、ミクロレベル(宿営地規模)での牧畜世帯の災害対処術を詳細に解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、現地での複数のカウンターパートと調査協力者との協働により、代表者が不在時にも資料収集・必要情報の翻訳、臨地でのデータ収集が滞ることのない体制が完成されている。このことから、当初よりもデータ収集などが効率化されており、より多くのエフォートを独自の分析に割くことができるようになった。 また調査系統②を現地助手に担当させることができたため、当初計画次年度に予定していた調査系統③も同時に進めることが可能となり、データ収集量に大幅な進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は当初計画の目的と方法を継承し、基盤研究(C)へとさらに研究対象の深化と範囲の広域化(S1~S3)を試みる。 S1. より広範な社会調査の実施体制を確立し、モンゴル国内の地域間の比較を実施する。また将来的には中央ユーラシア諸国(カザフスタン、キルギス、中国新疆ウイグル自治区など)の遊牧社会でも本調査をパッケージとして導入・実施し、遊牧社会の人類史に果たした役割を特定する。 S2. 大規模自然災害をへた現代のモンゴル遊牧社会は①減災の伝統知が失われつつあること、②伝統知によるレジリエンスを凌駕する災害が発生していること、の2つの問題に直面している。そのため、これら課題解決に本研究課題を活用するために「環境共生型牧畜モデル」を提唱し、現地の人々の声や意見をステークホルダーとして統合した研究体制を確立する。 S3. 現地では気候変動に応じた取り組みが萌芽しつつあることから、気象学・生態学分野の専門家とも共同して、同テーマの進展促進を考えている。
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