研究実績の概要 |
平成29年度中には、前年度において得られた2011年長野県北部の地震の前震活動の地震カタログをもとに当地域の地震活動発生メカニズムを考察し、その成果を国内2つの学会にて報告するとともに、自身の博士学位論文にも取りまとめた。この研究に関して前年度にMw 6.2 の地震の震源近傍の断層面付近(西クラスタ)と、それとは別に東に5km離れた断層外の領域(東クラスタ)において、東北沖地震発生からMw 6.2の地震発生までの間に200以上の小地震活動を検出したことを報告しているが、今年度の研究ではMw6.2断層傾斜方向における地震活動の距離・深さの分布と同一の場所・方向における先行の研究(Sekiguchi et al., 2013)で得られた地震波速度構造を比較・検討することにより、東クラスタ付近における流体の存在とその活発な流動に伴う群発地震活動の可能性が新たに示唆された。他方、東北地方太平洋沖地震の余震の表面波通過中に開始している点、特に西クラスタにおいて活動領域が断層の走向方向に沿ってMw 6.2震源付近へ移動する点が前年度の研究で明らかとなっている。今年度の研究ではこの結果をふまえ、前震領域の移動が東北沖地震の余震の地震動により促進された流体の移動もしくはゆっくり滑り領域の移動を反映している可能性が高いことを考察した。つまりMw 6.2の破壊核形成には、東北地方太平洋沖地震の地震動のみではなく余震の地震動も重要な役割を担っていることを示している。この結果は、今後の地震核形成過程のシミュレーションの研究にとって重要な拘束情報を与えるものである。
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